第9回:使えないし売れない土地の活用と市街化調整区域の実情

日本経済新聞が本日、「相続したのは「負動産」更地でも売れない、残る高度成長期の制約」という記事を掲載しています。弊社のクライアントもこのような「負動産」を保有しているケースが多く、対応に苦慮している企業も多いのが実情です。また、相続が発生した際にも、市街化調整区域内の土地をご家族が保有していたために、市場性が低く売却が難しい一方で、固定資産税や維持管理の負担は発生し続けるという状況に直面しているかたもいらっしゃいます。2026年に入り、政府による開発規制の緩和や相続ルールの見直しが進む中で、私たちが取れうる方法について整理します。

市街化調整区域とは?

市街化調整区域を一言で表現すると、市街化を抑制すべき区域のことです。都市計画法に基づき、無秩序な市街化を防ぎ、自然環境や農地を守るために指定されています。端的に言えば、原則として建物を建てることができないエリアです。

区分定義特徴
市街化区域すでに市街地を形成している、または10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。積極的に建物を建て、インフラを整備する。住宅や店舗が密集。
市街化調整区域市街化を抑制すべき区域。農地や森林を保護し、建物の建築を厳しく制限する。インフラ整備も最小限。

市街化調整区域に指定されると、土地の活用において非常に強力な制限がかかります。

  • 建築の制限:家を建てる、あるいは既存の建物を建て替える際にも、都道府県知事などから特別な許可(開発許可)を得る必要があります。原則として、農林漁業に従事する人の住宅や、公益性の高い施設(学校や病院など)以外は認められません。
  • インフラ整備の遅れ:市街化を抑制する場所であるため、下水道や舗装道路などの公共インフラの整備が市街化区域に比べて後回しにされる傾向があります。
  • 資産価値:建築制限があるため、周辺の市街化区域に比べて土地の価格は著しく低くなります。銀行融資の担保評価も厳しくなることが一般的です。

市街化調整区域を取り巻く環境の変化

これまで市街化を抑制すべき区域として、事実上の放置を余儀なくされてきた土地に対し、国土交通省は新たな方針を打ち出しています。日本経済新聞の報道にもある通り、地域課題の解決に資する施設や、一定の条件を満たす住宅の建築許可基準を地方自治体が柔軟に運用できる仕組みが整いつつあります。これは、空き地や空き家の解消を目指すとともに、医療・介護施設、あるいは地域の雇用を生む事業用施設の誘致を促進する狙いがあるものと考えます。相続した土地が、これまでのように売れない土地のままか、あるいは新たな活用価値が生まれるのか。その境界線は、自治体の条例改正の動向を正確に把握できるかどうかがポイントになるようです。

相続土地国庫帰属制度の進展と実務

活用や売却がどうしても困難な場合、2023年に施行された相続土地国庫帰属制度が有力な選択肢です。制度開始当初は審査の厳しさが指摘されていましたが、2026年現在は運用の積み重ねにより、却下事由の具体的な判断基準が明確化されつつあります。一定の負担金を支払うことで土地を国に引き取ってもらうこの制度は、管理責任を次世代に引き継がせないための有効な防衛策です。ただし、建物が存在しないことや、境界が確定していることなど、事前の整備が不可欠である点は変わりません。相続が発生する前の段階から、土地の現況を精査しておく必要があります。

税務上の評価と相続対策の盲点

市街化調整区域の土地は、固定資産税評価額が低く抑えられているため、一見すると相続税の負担は小さいように思えます。しかし、実務上の問題は税額そのものではなく、納税のための換金性が著しく低いことにあります。相続財産の多くがこうした不動産で占められている場合、納税資金の確保に支障をきたす恐れがあります。

  • 土地の分筆や合筆による価値の再定義
  • 近隣地権者への売却交渉の早期着手
  • 新制度による活用可能性を踏まえた再評価

これらの対策を、相続という土壇場の局面で慌てて行うのではなく、余裕を持って進めることが重要です。

負の遺産を資産へ変えるには

市街化調整区域の土地を持ってしまった場合、かつては価値がないとされた場所でも、物流拠点のニーズや緩和された基準による小規模な開発が可能になるケースが増えています。大切なのは、古い常識で土地を判断せず、専門的な知見を持って現在のルールに照らし合わせることです。


経営者のための不動産戦略

不動産は所有することが目的ではなく、その価値を最大化させることが真の目的であると言えるのではないかと思います。特に市街化調整区域のような特殊な土地は、法務・税務・不動産実務の三者が連携しなければ、最適な解決策は見えてきません。弊社では、最新のニュースや法改正の動向を常に分析し、単なる売却のアドバイスに留まらない、企業の財務体質を強化するための不動産再編を支援しています。お問い合わせはXのDMからでもお待ちしております。

ヒルズ&パートナーズ株式会社 取締役 岡村 雄太