第31回:金利時代を生き抜く方法を考えよう
日本経済新聞に「長期金利3%時代の住宅ローン、大手行は低金利競争に幕」という記事が掲載されました。日銀の利上げを受けて、住宅ローンの変動金利は約15年ぶりの高水準となり、長期金利も3%を超える水準まで上昇しています。これまで長く続いてきたゼロ金利の時代から、環境が大きく変わってきました。
これまで住宅ローンは、銀行にとって個人顧客を囲い込むための重要な商品であり、多少金利を低くしてでも住宅ローンをきっかけに口座を作ってもらうことで、クレジットカードや資産運用など、ほかの取引につなげていくという考え方が根底にありました。ところが、金利が上昇し、法人向け融資でも十分な利ざやを確保できるようになった今では、銀行にとって住宅ローンを安く貸し続ける意味は以前ほど大きくなくなっています。貸出先を法人や海外向けに振り向けた方が収益性が高い場合もあり、大手銀行の住宅ローンに対する姿勢にも変化が出始めています。
これまでの「低金利前提」は通用しなくなってきた
日本では長い間、住宅ローン金利が極めて低い状態が続いてきました。変動金利であれば1%を大きく下回る水準で借りられることも珍しくなく、「できるだけ長く借りる」「手元資金は残しておく」という考え方にも合理性がありました。特に最近は住宅価格そのものが大きく上昇しており、記事では首都圏の新築マンション平均価格が1億6,000万円を超えたと紹介されています。物件価格が高いほど、金利上昇による影響も大きくなります。
これから住宅を購入する人は、「いくら借りられるか」ではなく、「金利が上がった場合でも返し続けられるか」という視点をこれまで以上に持つ必要があります。住宅ローンの審査が通る金額と、家計にとって無理のない金額は必ずしも同じではないと言えます。
変動金利が悪いわけではない
金利が上昇しているからといって、変動金利を選んではいけないという話でもありません。変動金利には固定金利より低い金利からスタートできるメリットがありますし、借入額や返済期間、保有資産の状況によっては、今後も合理的な選択になる場合があります。
大切なのは、「今の金利だけ」で判断しないことであると思います。今後金利が1%上がった場合、2%上がった場合に、毎月の返済額がどの程度変わるのか。そのときに家計に余裕が残るのかを事前に確認しておく必要があります。金利上昇局面では、変動か固定かという二択だけではなく、借入額そのものを抑える、頭金を増やす、返済期間を調整するといった選択肢も含めて考える必要があります。
「現金を持っていれば安心」でもなくなる
金利がある世界では、資産の持ち方についても考え方が変わります。金利がほぼゼロだった時代には、現金を銀行口座に置いておいても、利息はほとんどつきませんでした。一方で、住宅ローンも低金利だったため、あえて繰り上げ返済をせず、手元資金を残すという考え方も一般的でした。これからは、借入金利と運用利回りをより意識する必要があります。例えば住宅ローン金利が上がっているのに、資金をほぼ利息のつかない普通預金に置いたままであれば、本当にその状態が合理的なのかを考える必要があります。
企業経営でも金利を無視できなくなる
金利上昇の影響は、住宅ローンだけではありません。企業向け融資でも金利の引き上げが進んでいます。これまで低金利で借入を続けてきた企業にとっては、借入金利が1%上昇するだけでも、支払利息は大きく増えます。例えば借入金が1億円あれば、単純計算で1%の金利上昇は年間100万円の支払利息増加につながります。
借入額が大きい会社では、その影響はさらに大きくなります。今後は売上や利益だけを見るのではなく、借入金の残高、金利条件、返済期間まで含めて財務を管理することが必要になります。
一方で、金利が上がることは悪いことばかりではありません。預金金利や債券利回りも上昇するため、企業が保有する余剰資金についても、以前より運用の選択肢が広がります。借入金の圧縮と余剰資金の運用をどのように組み合わせるのか、財務戦略そのものを見直す機会にもなります。
不動産価格にも影響は出てくる
金利が低ければ、同じ月々の返済額でも多くのお金を借りることができます。その結果、購入できる不動産の価格も上がりやすくなります。反対に金利が上がれば、借り手の返済能力は低下し、不動産価格には下押し圧力がかかります。
もちろん、東京のマンションのように供給不足や建築費、人件費、外国人投資家の需要など、金利以外の要因も大きいため、「金利が上がったからすぐに不動産価格が下がる」と単純に考えることはできません。
ただ、1億円、2億円という高額な住宅を購入する人にとって、金利が1%変わる影響は無視できません。今後は不動産価格そのものだけでなく、「その価格を支えられる資金調達環境が続くのか」という視点も必要になると思います。
最後に
日本では長く低金利が続いたため、私たち自身も「金利がほとんどない世界」に慣れてしまった部分があります。しかし、現在は住宅ローン金利も企業向け融資も上昇し、預金や債券にも金利がつく時代に戻りつつあります。
これは単に住宅ローンの返済額が増えるという話ではありません。住宅購入、不動産投資、企業の借入、資産運用など、お金に関するさまざまな判断の前提が変わってきています。
これから大切になるのは、「金利が上がったから借りない」「金利が低いから借りる」と単純に判断することではなく、自分や会社の財務状況に照らして、どの程度の金利まで耐えられるのかを把握することだと思います。
金利のある世界は、借りる側にとっては負担が増える一方で、資産を持つ側にとっては新しい選択肢も生まれます。金利を怖がるのではなく、その影響を数字で確認しながら、借入と資産の持ち方を見直していくことが、これからの時代には必要になってくるのではないでしょうか。
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