第8回:事業承継の場面で活用できる補助金制度について
事業承継やそれに伴うM&Aは、企業の歴史においても大きな転換点の一つであると思います。事業承継をスムーズに実施するには、弊社のようなコンサルタントをはじめ税理士や弁護士といった士業への相談、M&Aの場合にはシステムの統合あるいは設備投資など、様々な局面において費用が必要となります。こうしたコスト負担を軽減し、スムーズなバトンタッチを後押しするために用意されているのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。2026年度(令和7年度)の最新状況を踏まえ、実務的なポイントを整理しました。
目的別に選べる4つの支援枠
2026年の制度では、承継の形態や目的に合わせて4つの枠組みが設定されています。
| 支援枠 | 主な対象 | 補助上限(目安) |
| ① 経営革新枠 | 承継を機に新事業や設備投資を行う場合 | 800万〜1,000万円 |
| ② 専門家活用枠 | M&Aの仲介手数料やデューデリジェンス費用 | 600万〜2,000万円 |
| ③ PMI推進枠 | M&A後の組織統合(IT統合や研修)費用 | 150万〜1,000万円 |
| ④ 廃業・再チャレンジ枠 | 承継に伴う既存事業の整理や在庫処分費用 | 150万〜300万円 |
特に近年重視されているのが「③ PMI推進枠」です。せっかくM&Aを行っても、その後の組織やシステムの統合がうまくいかなければシナジーは生まれません。この企業と企業の統合プロセスに国が補助金を出すという点は、非常に実務に即した支援と言えるとともに、統合プロセスには想像以上に多くの負荷がかかることがわかるかと思います。
補助額を最大化させる賃上げと成長特例
今回の公募において、補助額を上乗せするための重要な鍵が2つあります。
- 賃上げ要件: 事業場内最低賃金を一定以上引き上げる計画を立てることで、補助上限が最大200万円程度加算されます
- 100億企業特例: 将来的に売上高100億円を目指すような成長意欲の高い企業がM&Aを行う場合、専門家活用枠で最大2,000万円まで補助される特例が継続されています
注意すべき期限とデジタル手続き
実務上の最大のハードルは、申請そのものの準備にあります。
- 特例承継計画の提出期限: 補助金とは別に、贈与税・相続税が100%猶予される「事業承継税制(特例措置)」の計画提出期限が2026年3月31日に迫っています。補助金の申請と併せて、この税制優遇のチャンスを逃さないことが極めて重要です
- GビズIDの取得: 申請はすべてオンライン(Jグランツ)で行われます。これに必要な「GビズIDプライムアカウント」の発行には数週間かかる場合があるため、検討段階ですぐに取得しておくべきです
補助金は未来への投資のブースト
補助金は次の世代や新しいオーナーが、より良い状態で経営をスタートさせるための投資であると言えます。手続きの煩雑さや資金計画への不安から、事業承継のタイミングを逃してしまうことは、企業にとって最大損失であると言えるかと思います。国の制度を賢く活用し、新たな一歩を踏み出すための準備を始めましょう。

一貫したサポートをご提供させていただきます
弊社では、現在多くのM&Aや事業承継の現場に立ち会っています。補助金の活用は、経営者の皆様が次世代への事業の承継に向けた新たな一歩を踏み出す大きなきっかけになるのではないかと思います。補助金の申請支援から、承継後の組織作り、ITインフラの整備までトータルで伴走しています。この転換期をどう乗り越え、次の成長へ繋げるか、最適な手段を共に描き出します。お問い合わせは問い合わせフォームもしくはXのDMよりお待ちしております。
ヒルズ&パートナーズ株式会社 取締役 岡村 雄太

